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2018/03/20 14:08
ドイツの陸上風力入札制度の試行錯誤
日本でもFITから入札制への移行が検討されていますが、
先行して移行した欧州でも、入札制は順風満帆ではありません。

「入札制」は単なる手段であり、自動的にコストが下がる「打出の小槌」
ではありません。周到な準備と細部への配慮が無いと失敗します。
特に「資格審査なしの単純な価格入札」と「キャンセル時の罰則が軽い」
が重なると、一種の空抑えが横行して、計画穏座が頻発します。
価格以外も加味した総合評価で、当事者能力の無い無責任な事業者の
入札参加を排除する工夫が大切です。

「国民負担軽減」は重要ですが、やり過ぎて地域内の関連産業が壊滅すると、
国富流出(輸入に依存)と失業という形の国民負担が増えてしまいます。
欧州の再生エネ産業育成策は、太陽光では失敗しましたが、風力発電(特に
洋上風力。型式認証と融資審査で有効な非関税障壁を構築)では大成功です。

ドイツでも、再生可能エネルギー導入拡大と地域内関連産業育成という
最終目的に合致するように、不具合点を順次試行錯誤しています。

【ドイツの陸上風力の入札制の経緯】

① 風力発電でFITを導入【成功】
 → 順調に導入が増える。国内風車メーカも成長。

② 太陽光にもFITを適用【失敗】
 → バブルが発生して太陽光が急増。負担額も増えた。
 → 負担額の割に発電量が少ない/風力より費用対効果が悪い と酷評される。
 → 中国の太陽光パネルメーカが輸出攻勢。ドイツのQセルズは負けて倒産。

③(②の反省から)国民負担抑制(コスト削減)のために入札制を導入。
  陸上風力では小規模な市民風力に配慮して、優遇措置(許認可未取得での
  入札参加、落札後の建設猶予期間を4年に延長(大手は2年))を設定【失敗】

 → 複数の市民風力が政府調査の前年度実績コストを下回る非常識な低価格で応札して
   入札枠の100%を独占。大手専門企業は1件も落札できず。
 → 余りの低価格に落札された案件の実現性に懸念が広がる。
 →「このような低価格は産業的に持続可能ではない」「4年後にキャンセルが多発すると
   市場縮小で産業が持たない」と風車工業会(特にEnercon)から政府に苦情が上がる。

④ 今年2月の第4回入札から市民風力の入札資格を厳格化。【成功に復帰しつつある】
 → 大手事業者も一部の落札に成功。落札価格も少し上昇した。

【ドイツの入札制移行の日本語の解説記事】
ドイツのFIT制度、入札で競争論理を取り入れ ベルリン@対話工房
(1)改正の概要 http://www.taiwakobo.de/neu/energie/2018/eeg_ausschr.htm
(2)陸上風力  http://www.taiwakobo.de/neu/energie/2018/eeg_ausschr2.htm
(3)市民風力  http://www.taiwakobo.de/neu/energie/2018/eeg_ausschr3.htm
(4)同上の事例 http://www.taiwakobo.de/neu/energie/2018/eeg_ausschr4.htm

【関連する英文報道】

※ドイツ電力当局が2018年夏に陸上入札の市民風力優遇を見直しへ
Germany Plans to Reset Rules for Onshore Wind Farm Auctions 5月31日 Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-05-31/germany-is-said-to-reset-rules-for-onshore-wind-farm-auctions

※最近の入札制度で発電コストが下がったように見えるのは錯覚(将来価格の先取)に過ぎない(ドイツの調査)
Auctions didn’t make wind power cheaper, study finds 3月9日 Renew Economy
http://reneweconomy.com.au/auctions-didnt-make-wind-power-cheaper-study-finds-62144/

※最近の世界のニュース5件。ドイツの2月の陸上風力入札改革を含む。
5 industry trends and market developments
Germany shifts away from community projects in fourth onshore auction 3月5日 GWEC
http://gwec.net/5-industry-trends-and-market-developments/

※ドイツの制度改定後の最初の入札では落札価格は上昇した。
Germany awards higher prices in latest onshore wind power auction 2月20日 ロイター
https://af.reuters.com/article/africaTech/idAFL8N1QA4OK
・市民風力による採算割れレベルの低価格入札(4年後に実施不能でキャンセルする可能性大)
 を防ぐ改定後の初入札で、落札価格は前回3.8ユーロ/kWhから4.6ユーロ/kWhに上昇した。
・前回は全落札者が市民風力だったが、今回は大手事業者も一部を落札した。
 全132件・989MWの入札中、中小規模(市民主体)の落札は83件・709MWに留まった。

[ドイツ] 陸上風力競争入札、落札価格は低下するも制度の課題が指摘される
2017年12月14日 電気事業連合会
http://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_topics/1257246_4115.html


【ドイツで風車工場の閉鎖が相次ぐ】

ドイツの陸上風力入札は、上限が2.9GW/年(参考:2017年陸上実績4.2GWから3割減)、
落札者に建設まで2~4年の猶予があり、キャンセル罰則も弱い、いう内容なので、
風車メーカの国内新規受注が急減しています。
このため Enerconは、ブレード、タワー、関連機器の工場閉鎖に追い込まれています。

Enercon suppliers to close、2018年3月27日 Windpower Monthly
https://www.windpowermonthly.com/article/1460614/enercon-suppliers-close

Production to end at Enercon blade supplier、2017年9月29日 Windpower Monthly
https://www.windpowermonthly.com/article/1445917/production-end-enercon-blade-supplier


NordexAccionaも厳しい状況です。

Why are turbine manufacturers doing so badly? 2018年3月28日 Bloomberg
https://www.bloomberg.com/gadfly/articles/2018-03-28/we-all-love-wind-power-unless-you-want-to-make-money

Wind turbine maker Nordex flags turnaround in German market 3月27日 ロイター
https://www.reuters.com/article/nordex-results/update-2-wind-turbine-maker-nordex-flags-turnaround-in-german-market-idUSL8N1R90M1


【世界の風車メーカは機器価格低下で利益率が減少】

ここ1,2年で風力発電の価格はドイツ以外でも世界的に劇的に下がっています。
これは一見、良い傾向に見えますが、市場の成長率を越えて低価格化が進むと、
産業界に流入する資金が細って企業体力が弱るので、持続可能でなくなります。

Bloomberg発表では世界の風力発電は、新設容量は約50GW/年を維持していますが、
年間投資額は10%程度減っています。つまり単価が低下しており、風車メーカは
売上は維持しつつも、利益率は減っている状況です。

風力発電機ベスタス、通期は7.4%減少
2月8日 NNA
https://europe.nna.jp/news/show/1723578
英文:※世界的な低価格化競争によりVestasの2017年の収益は前年比でー7.4%と低下した
   Vestas profit falls amid 'fierce' competition、2月7日 Market Watch
 https://www.marketwatch.com/story/vestas-profit-falls-amid-fierce-competition-2018-02-07
 ・2016→2017年で、利益profitは9.65億ユーロ→8.94億ユーロ、収益revenueは102.4億ユーロ→99.5億ユーロ、
  売上salesは10.494GW・95億ユーロ→11.176GW・89億ユーロになった。2017年の利益率は12.4%
 ・2018年の予測は、収益は100~110億ユーロ、利益率は9~11%。
 ・再生エネルギーの売電価格の過激な低下で世界的に競争が激化した。再生エネ産業の変化は極めて速い。
出典:Vestas Annual report 2017、2月7日 Nasdaq
  https://globenewswire.com/news-release/2018/02/07/1335083/0/en/Vestas-Annual-report-2017.html


【洋上風力の低価格入札も、まだ成否はわからない】

イギリスのエネルギー政策と再生可能エネルギー問題 2月18日 キャノングローバル戦略研究所
http://www.canon-igs.org/event/report/Article_Constable.pdf
・(英国の洋上風力の)コストが低下しているというのも「トリック」がある。
 今入札されているロジェクトの多くは、実際に建設するのが 2020 年頃の予定だ。
 その頃には温暖化対策の炭素税で火力発電コストが上がると期待して応札している。
 もし卸電力市場価格が上がらなければ、彼等は事業を実施しないだろう。
 ペナルティが緩いので「ギャンブルに参加する権利」を確保しているに過ぎない。