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2018/01/24 23:31
中国風車メーカSinovelの産業スパイ事件が終局に近づく
中国の風車メーカSinovelが技術供与元の米国企業AMSC/Windtechを産業スパイした事件。
2011年に発覚した、世界の風車業界では有名な知財侵犯です。
スパイ小説のようですが、本当にあった色々な面でひどい話。

【最新報道】
中国風車製造大手(華鋭Sinovel)、米企業秘密の窃盗で有罪 2018年1月26日 産経Biz
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/180126/mcb1801260500012-n1.htm
英文記事:
 China's Sinovel convicted in U.S. of trade-secret theft、1月24日 ロイター
  https://www.reuters.com/article/us-sinovel-wind-gro-usa-court/chinas-sinovel-convicted-in-u-s-of-trade-secret-theft-idUSKBN1FD2XL
 China's Sinovel Convicted in U.S. of Stealing Trade Secrets、Bloomberg
  https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-01-24/chinese-firm-sinovel-convicted-in-u-s-of-trade-secret-theft
 Chinese Firm Found Guilty of Stealing Wind Technology from U.S. Supplier、MSN
  https://www.msn.com/en-us/finance/companies/chinese-firm-found-guilty-of-stealing-wind-technology-from-us-supplier/ar-AAv8xF9
 AMSC Provides Update on Landmark Conviction of Sinovel、1月29日 AMSC社発表
  http://ir.amsc.com/releasedetail.cfm?ReleaseID=1055599

【現在までの経緯】
前段
① 中国政府は2000年代初頭に風力発電を導入を始める際に70%の現地調達率規制を制定。
  海外企業の参入抑制と国内メーカの育成を図る。(米国商務省の圧力で2009年10月に撤廃)
② 中国風車メーカは欧米企業(風車メーカや設計コンサル)から技術供与を得て風車製造を開始。
③ しかし設計図面入手後は、勝手に改変して以降のライセンス料を払わない悪習が横行した。

技術供与開始
④ 米国AMSC/Windtech社は 中国華鋭Sinovelに技術供与する際に、契約打切の予防策として、
  制御ソフト(LVRT等)を暗号化して現物支給(Black box化)する工夫で支払継続を確保。
⑤ Sinovel社は中国市場で急成長して、2010年には世界シェア2位(4386MW/年、累計は10GW)
  まで躍進。海外進出も開始した。 AMSC社にとっても最大の顧客になった。 *1

契約破棄と産業スパイ発覚
⑥ 2011年3月Sinovel社が突然、AMSC社との契約を破棄、制御系の内製化を開始。
  AMSC社は売上急落で経営危機に陥る(約8億ドルの損害)。 *2
⑦ 6月にAMSC社技術者が密かに新製Sinovel風車を調べてID番号の無い制御ソフトを発見。*3
⑧ 調査会社(探偵)による情報漏洩源の調査で、AMSC社のオーストリアの子会社社員の
  Dejan Karabasevic(3月に辞表提出)が制御ソフトのソースコードを違法に入手して
  いたと判明。*4  Sinovel幹部との通信履歴(SkypeとE-mail)も入手された。 *5
⑧ 9月に犯行社員が逮捕されて、「SinovelにCash&Womenで買収されていた」と白状。*6
  結局、2011年後半にオーストリアで懲役1年、執行猶予2年の有罪判決を受けた。
 (注:当初求刑の懲役20年より軽いので、司法取引等があったのかもしれません。)

訴訟へ
⑩ AMSCがSinovelを産業スパイと損害賠償(10億ドル以上)で告訴(米中双方)。
⑪ Sinovel社は海外進出で米国に風車を輸出していた(米国内に実害が出た事案) *7
  のが仇となり、米国裁判所にも管轄権が生じた。
⑫ 中国での訴訟は第一審ではAMSCが敗訴(国際紛争では自国贔屓の判決が出易い)
  しかし上告後の上級審では証拠が余りに明白で悪質だったため、Sinovelが敗訴。
⑬ Sinovel社は海外事務所を撤廃して中国国内だけの商売に戻る。
⑭ Sinovelは業績急落。上層幹部が次々辞職。 *8
⑭ キャシュ不足で債券償還ができなくなり(不渡発生)、上海証券市場で管理ポスト入り。
  しかし地方政府とコネがあるので倒産せずに生き残る。
⑮ 今回、米国の裁判所でも陪審から有罪評定。
  トランプ政権の対中国強硬策の槍玉にあげられる。 *9
  司法省はAMSCが株主資本10億ドル以上と約700人の雇用を失ったと評価。
⑯ 刑事罰と損害賠償の詳細は4~6月頃に判決が出る見込み。

*1 2011年3月までに1億ドル以上、以降の将来見込は7億ドル以上

*2 Chinese firm paid insider ‘to kill my company,’ American CEO says、2013年8月6日 NBC News
  https://www.nbcnews.com/news/other/chinese-firm-paid-insider-kill-my-company-american-ceo-says-f6C10858966

*3 暗号無効化と試験運用期間(2週間)の無限延長の2点が改竄されていた。
  AMSC/Sinovel industrial espionage thriller takes a procedural detour, threatening U.S. criminal prosecution、2013年9月9日
  https://www.lexology.com/library/detail.aspx?g=c06d91c6-1d63-4fb0-a1a7-d803bf90ef60

*4 セキュリティ権限を持つ同僚に偽メールを送って米国内のサーバからオーストリアに
  ダウンロードさせた。詐欺に近い手法(一種のSocial hack)と思われる。

*5 犯行社員とSinovel幹部の通話記録の例
  Mr. Karabasevic chatted with a Sinovel executive about modifying AMSC’s software.
  “If you succeed, Sinovel can separate from AMSC,” Mr. Karabasevic.
  “I need your strong help,” the Sinovel executive replied.
  “All girls need money. I need girls. Sinovel needs me,“ Mr. Karabasevic.
  “Best man. like Superman...haha,“ the Sinovel executive.
  “Yes, superman,“ replied Karabasevic.

*6 Sinovelは報酬170万ドル、女性(ハニートラップ)、逢引用の北京のアパート、を提供。
  報酬は8月に犯人の別のガールフレンド(ベトナム人Cabin Attendant)の口座で受取る。

*7 2010年12月に米国マサチューセッツ州水資源公社のボストン郊外の排水ポンプ場に1.5MW
  風車を納入。基礎工事不良や着氷検知システム不調でもトラブルがあったそうです。

*8 在職中に米国で有罪判決が出ると、以後は米国に入国できなくなる(逮捕される)ため、
  会社を見捨てて個人的な保身に走ったもの。

*9 トランプ米大統領、中国に巨額の罰金検討 知的財産権侵害で報復、2018年1月17日ロイター
  https://www.jiji.com/jc/article?k=2018011800319